2014年8月21日木曜日

「Hearthstoneを副業として捉えている」台湾人気実況配信者シャオミン(小銘)氏インタビュー

 台湾のHearthstone界で最も人気のある実況配信者シャオミン(小銘)氏のインタビューです。現在30歳でソフトウェアエンジニアをしているシャオミン氏は仕事と家庭を両立しながらHearthstoneの実況配信を行い、平均で500人~1000人、多いときは3000人以上の視聴者を獲得しています。

 今年7月31日~8月4日に開かれたPC見本市「台北電腦應用展」内のBlizzardブースでもシャオミン氏は「Hearthstoneの世界大会『World Championship(WCS)』台湾地区最終予選」を始めとした各種Hearthstoneイベントの実況解説を担当しました。

 そんなシャオミン氏は今回の試合をどう捉えているのでしょうか。イベントの感想のほか、家庭とゲームの両立の仕方や自身の活動方針について語ってもらいました。なお、本インタビューは8月4日に行なったものです。


シャオミン氏

目次

WCS台湾代表選手2人の実力とは
今回のBlizzardブースの運営について
家庭とゲームのバランスの取り方
台湾でHearthstoneのプロはありえるか


WCS台湾代表選手2人の実力とは


……WCS台湾地区最終予選の感想を聞かせてください。
 本戦出場を勝ち取った2人の選手(tom60229選手とFrozenIce選手)はどちらもミスが全くなく、すばらしいプレイを見せてくれました。実は(試合を見るまでは)私自身も彼らに対抗できる実力があると思っていたのですが、状況における考え方など、今日の試合で彼らが見せた実力は私を大きく上回っていました。

 2人はどちらもWCS台湾地区一次予選(7月26日)から勝ち上がってきた選手なのですが、ここで私がちょっと悔しく思うのは、私がWCS台湾地区一次予選(*)でこの両選手とついに対戦する機会がなかったということです。あのときはイエバイ(葉白)さんとチューディエ(廚爹)さんが実況解説を担当しており、私は選手として予選に参加していたのですが、途中(2回戦)で負けてしまいました。

 台湾では約2週間後に招待制の大会「Iron Forum Night」(*注1)が行なわれるのですが、それには私も選手として参加しますので、そのときに彼らと対戦し、打ち負かしたいな、と思っています。

*注1:台湾のメディアサイト「Iron Forum(鉄人論壇)」が主催する招待選手12名によるオフライン国際大会。シャオミン氏はプレイオフでAmaz選手を破ったものの、準決勝でtom60229選手に敗北した


WCS台湾地区最終予選で本戦出場資格を勝ち取ったtom60229選手(左)とFrozenIce選手(右)

……2人の実力は具体的にどのあたりが優れているのでしょうか。
 実力は大きく2つの部分に分けられるでしょう。デッキ構築とそのプレイングです。(2人の選手の)デッキは正直ほかのプレイヤーとあまり変わらないと思いましたが、プレイング(デッキの理解と状況判断力)はとても優れていました。

 たとえば、試合で使われるデッキへの造詣が深ければ「相手がどんなSpellやMinionを持っているか」を予測でき、相手のカード(や状況)に対してどんな手で反撃すればいいか、あるいは(負けているゲームをひっくり返すには)どうすればいいかがわかります。

 Handlockを例に出しましょう。こちらのヘルスが限界(例えば8点や10点)まで下がっていたとき、相手がHunterだったり、もしくはLeeroy Jenkinsのようなカードを持っていたりすると次のターンにやられてしまう可能性が高くなります。そんなときにLife Tapでヘルスを削ってカードを引くのは好ましくありません。

 しかし、状況的に次のターンでやられるのが確定しているのであれば、つまり、カードを引かなくても負けることが確定しているのであれば、Life Tapに賭けたほうがいいでしょう。引きによってはそのターン中に相手を倒せたり、TauntのMinionを出せたりする可能性があるかもしれません。

 Hearthstoneではほかにも「まずMinionを出すか、それともSpellで相手のMinionを除去するか」というように「経験を重ねて初めて正しい判断を下せる」という場面は多く、2人の選手はこのあたりの判断力が抜きん出ていると感じました。

……台湾代表となった2人の選手に期待するものはなんでしょうか?
 WCS本戦ですばらしいプレイを見せてほしいですね。彼らの実力はとても高く、WCS本戦で優勝を勝ち取る力もあると思っています。もちろん優勝するに越したことはありませんが、少なくとも賞金を獲得してきてほしいですね。

 HearthstoneではStarCraft IIにおける操作技術(といった反射神経の部分)が必要なく、主に思考力と判断力が必要になります。
 (台湾人は)小さい頃から戦略ゲーム、たとえば中国将棋や囲碁に触れてきましたから、その意味で外国人よりも有利かもしれません。戦略ゲームではターンの行動を決めるのに「次のターン、もしくはそれ以降のターンにどんな状況が発生し、どう対応するか」ということを考えなければいけませんから、戦略思考を育むのにとても役に立ちます。

 ところで、日本人でHearthstoneをプレイしているゲーマーはあまり多くないですよね。日本人のゲーマーはアメリカや韓国が開発したゲームではなくプレイステーションなどの国内ゲームをプレイしている印象がありますが、そのうちに日本人選手もHearthstone(WCS本戦)に加わるチャンスがあればいいな、と思います。


WCS台湾地区最終予選で解説を行なうシャオミン氏

今回のBlizzardブースの運営について


……今回の試合形式についてはいかがでしたか?
 WCS台湾地区最終予選が採用したBO5の試合形式はBO3に比べてフェアな形式です。7月26日の台湾地区一次予選では時間の関係でBO3の試合形式を採用していましたが、そのあたりも私としては少し残念でした。BO3だと運の要素がより大きくなるからです。BO5やBO7なら(試合回数が増えるに従って)運の影響はさらに低くなります。後にBlizzConで行なわれるWCS本戦でも、BO7の試合形式が採用されるのではないでしょうか。

……イエバイさんと組んだ試合の実況解説については?
 お互い組むのに慣れていたので簡単でしたね。昔からイエバイさんとは何度も一緒に試合の実況をしていたので、安心して彼に(実況における話の)流れを任せられました。
 喋りのメインはイエバイさんでしたが、Rankedのランクでは私のほうが上なこともあり、状況における考え方などでよく私に話を振ってくれました。とても順調かつ滑らかな実況解説だったと思います。


ステージで解説を行なうシャオミン氏(左)とイエバイ氏(右)

……会場では試合以外のイベントも多く行なわれました。
 Hearthstoneを普及させるべく、Blizzardは周到に準備していたと思います。Hearthstoneを一度プレイしたプレイヤーはもちろん、Hearthstoneをプレイしたことがないプレイヤーでもゲームに興味を持ってもらえるようなイベントを用意していました。

 たとえば今日(8月4日)の「カードパック抽選会(卡包抽抽樂)(*注2)」はプレイの仕方がわからない人でも参加できるイベントでした。そこで参加者が引いたカードについて私とイエバイさんが1枚1枚の特徴を解説し、観客の皆さんによりゲームについてより興味を持ってもらうのです。
*注2:「会場の観客2名がステージでHearthstoneのカードパックを開け、出たカードの合計マナコストが高いほうがTシャツなどの賞品を獲得する」というステージイベント。シャオミン氏とイエバイ氏はここで参加者が引いたカードの解説を担当した。

 解説では主に「カードの基本的な効果そして使い方」「相手がこのカードを使ってきたらどのように対応するか」という2つの面を意識し、構築またアリーナのデッキに関わらず、ゲームへの影響が大きいカードを解説対象に選んでいきました。

 「構築で使えるカード」だけだと使えるカードも限定されてしまうのですが、アリーナではランダムの選択肢の中から選ぶことからカード1枚1枚のステータスの水準が低くなるので、結果使えるカードも増えていくんです。たとえば「構築では使えないが、アリーナでは実は使える」といったカードも多く存在します。アリーナではときどき「3枚の使えないカードの中から少しマシなカード」を選ばなければいけないこともありますからね(笑)。


カードパック抽選会のイエバイ氏(右から2番目)とシャオミン氏(右)

家庭とゲームのバランスの取り方


……シャオミンさんが実況配信を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
 私がHearthstoneを始めたときに海外選手の実況配信を見ていたことがきっかけですね。私が見ていた中で有名な選手はHafu選手とTrump選手でしょうか。始めたばかりの頃は彼らの動画がおもしろくてけっこう見ていたんです。でもそのうちに「あれ? 自分のプレイとそんなに差がないぞ」と気が付いて、自分が上手のではないかと思いました。それで(彼らがやっていることを)中国語でやってみてもいいかなと。

 配信の反響は予想以上によく、皆さんから好評でした。こうして実況配信を始め、続いて台湾Blizzardによる「第2回e-sports実況解説者コンテスト『Hearthstone部門』」(*3)に参加していき、(実況解説など)関連する仕事にも関わるようになっていったのです。

*3:台湾Blizzardが今年4月8日~5月26日にStarCraft IIとHearthstoneの2部門で開催した実況解説者のコンテスト。コンテスターは用意された3本の試合動画のうち1本に自分の実況解説を吹き込んで提出し、ユーザー投票と台湾Blizzardの評価による成績発表を待つ。シャオミン氏はここで優勝し、「2014 BlizzConツアー」と共に3万台湾ドル(約10万円)を賞品として獲得した(台灣暴雪《電競賽評選拔大賽》/台湾Blizzard)。


シャオミン氏が第2回e-sports実況解説者コンテスト「Hearthstone部門」で優勝したときの写真(台湾Blizzardから転載)

……当時はほかに台湾人の実況配信者はいなかったのでしょうか?
 いたにはいたのですが、「プレイと喋りが両方上手い」という配信者はいませんでした。一部の人たちはプレイがとても上手いのに喋りが苦手だったり、また別の人たちは喋りが上手くても実力がそこまで高くなかったりしました。一方、私はプレイと喋りがある程度できました。それが視聴者同士、友達に紹介して一緒に見るというように、口コミで広がって今の状況になったのかなという気がします。

 以前は多いときで3000人以上が見てくれていましたが、今は約1000人しか残っていません。これには私の配信時間が少なくなったというのがあります。ちょうどこの間子供が生まれ、それで(忙しくなって)配信にかけられる時間も減ってしまいました。こればかりはしょうがないですね。

 もう1つ理由があるとすれば、Hearthstoneにしばらくの間新コンテンツが出てこなかったことが挙げられるでしょう。(最近の)台湾でのHearthstone人気は明らかに下がってしまいました。


シャオミン氏の実況配信の様子(Twitchの配信録画より)

……お子さんの話に触れられましたが、シャオミンさんはゲームと家庭のバランスをどのように取っているのでしょうか?
 基本的には家庭中心で、余った時間にHearthstoneと実況配信ができればという感じですね。ゲームをやるのは先に家庭の用事を片付けてからです。
 実は妻も反対しているわけではありません。私の趣味がゲームなのは彼女もわかっていますし、趣味を飛び出した活動も「副業として真剣にやるなら悪くない」と言ってくれています。

 また、(子供が生まれた関係で)しばらくしたら実況配信を少なくとも1ヶ月間は休むつもりです。Hearthstoneをプレイすることはあると思いますが、Twitchで実況プレイを皆さんに見せることはしません。配信すると視聴者とのコミュニケーションに集中しなければいけないので、ゲームの思考に専念できなくなるんです。

……シャオミンさんにとって実況配信の一番おもしろい部分とは何でしょうか?
 視聴者とのコミュニケーションですね。たとえばプレイ中に視聴者から「おお、すごい!」といった反応がきたり、あるいはゲーム中の行動について「どうしてこの動きをしたの?」と聞かれたりします。
 また、プレイ中に私がミスをしたときは視聴者もそれを教えてくれますから、自分の上達にもプラスになるのです。お互いに教え合って上達できる、このような視聴者とのコミュニケーションが実況配信で一番おもしろいところですね。

 それから、(配信というわけではないのですが)6月8日に一度、「レストランに集まってご飯を食べ、各自持参したタブレットやノートPCでHearthstoneをプレイする」というイベントを(Facebookファンページで呼びかけて)オフラインの集まりを開催したことがあります。ちょうどFireside Gatheringに近いものですね。
 このときはネットで面識が無かった人も含めて、約15人が参加してくれましたし、反響も非常に良いものでした。あくまでも家庭がメインなので、今後も開催するかどうかは様子を見てからですが。


6月8日にシャオミン氏が開催したオフラインイベントの様子(シャオミン氏のFacebookページから転載)

台湾でHearthstoneのプロはありえるか


……シャオミンさんは7月26日に開かれた今大会の予選にも参加していましたが、選手と解説者、ご自身はどちらが好みなのでしょうか?
 私は選手のほうが好みですね。実は私の解説も、自分が実況配信をしていたときにたくさんの視聴者が教えてくれた知識に支えられている部分が大きいのです。そのおかげで解説者になることができました。

 今後はできれば台湾代表となって国際大会で国を背負って戦いたいと思っています。そこでもちろん理想は優勝ですが、良い成績を収めたい。これが私の夢ですが、もっとも(時間も限られていますから)難しいでしょうね。

……シャオミンさんが将来プロの選手や解説になることはないのでしょうか?
 おそらくないでしょうね。台湾のe-sports業界は選手または解説に限らず、生計を立てていけるほど発達してはいませんから。今のソフトウェアエンジニアの仕事に比べて、順調に家族を養っていくことはできないでしょう。

 私自身はあくまでもアマチュアであり、Hearthstoneを副業として捉えています。Hearthstone関連の仕事をするのは好きなのですが、本業にすることは決してありません。単にゲームにのめりこむというだけです。


左:7月31日のPC見本市「台北電腦應用展」内BlizzardブースではHearthstoneのエグゼクティブ・プロデューサーのハミルトン氏が来場し、ステージ上でシャオミン氏とエキシビジョンマッチを3戦行なった 右:ステージ上で握手するハミルトン氏(左)とシャオミン氏(右)

……「e-sportsで生計を立てていけない」というのはHearthstoneのe-sportsとしての将来性によるものでしょうか?
 Hearthstone自体はe-sportsとしてもやっていけると思っています。ただ、e-sportsの選手になるには1つのゲームをやるだけでは足りません。場合に応じて新しいゲームをプレイできる必要があります。

 私が気に入ったHearthstoneというゲームで、幸いにも私はファンの皆さんを獲得し、実力もつけることができました。トップクラスではありませんが、私のHearthstoneの実力はトップクラスの選手と比べてもそこまで劣っていないと思っています。

 しかし、別のゲームになったら今のようにファンの皆さんを獲得できるかどうかわかりませんし、また、ほかの選手たちの実力に追いつけるかどうかもわかりません。
 私もあまり若くないですし、別に仕事をしていると時間も限られてきますから、新しいゲームについていくのは大変でしょう。

……どうもありがとうございました。

 以上シャオミン氏のインタビューでした。非常に落ち着いている方で、家庭人としての責任を果たしながらもHearthstoneに尽力されているという印象を受けました。台湾は日本に比べてe-sportsが発展しているとはいえ、安定した職業とするのは難しいようですね。
 シャオミン氏はTwitchでの配信のほか、Facebookページでは大会で使ったデッキ集なども公開していますので、台湾のメタに興味がある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。

シャオミン氏の関連リンク
Twitchアカウント:hcm1008
Facebookページ:小銘 粉絲團 Hearthstone - 爐石戰記
6月28日のオフラインイベント写真アルバム:小銘粉絲團聚會

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