2014年11月18日火曜日

国内のe-sportsシーンを一変させる社会人リーグの構想。A5G テストイベント感想

「トップクラスのプレイヤーではない、社会人同士の対戦を見て面白いのだろうか」

 先日、社会人リーグ設立を目的としたイベント「After Five Gaming(A5G)」の告知を聞いたとき、ぼくはそんな疑問を抱いていました。競技というのは実力がすべての世界ですから。

 ところが、11月14日(金)にe-sports SQUAREの3周年パーティーで行われたそのテストイベントには、ひじょうに良い意味で予想を裏切られました。ぼくが10年間ゲームを続けてきた中で初めての衝撃だったかもしれません。その感想を以下にまとめておきたいと思います。



「有名人が『このゲームおもしろい』って言ってくれればすぐ広まるんだけど…」

 これは「どうすればe-sportsを普及させられるか」という観点からよく言われることです。もちろん話し手も現状を揶揄して言っているだけで、実現できるとは本気で思っていません。でも、有名企業同士で争う社会人リーグでは、それを実現できます。有名企業は有名人と同じだからです。

 たとえば海外の社会人ゲームリーグ「After Hour Gaming」、2013年のLeague of Legendsの決勝戦は「Microsoft対Amazon」でした。
 この組み合わせ、聞いただけでワクワクしてきませんか。IT分野で世界をリードする企業のビジネスマンたちは、どんな顔をして、どんなふうに試合に臨むのでしょうか。
 同様にMicrosoft対Apple、Sony対任天堂などの試合なら、普段ゲームをやらない人たちでさえちょっと見てみたくなるでしょう。有名企業の名前にはそう思わせる力があります。


当日参考事例として紹介されたAfter Hours Gaming

 今回のテストイベントにも、ゲーミングデバイスを製造・販売するロジクールとe-sports SQUAREを運営するSANKOという、国内e-sports業界ではよく知られている企業が登場しました。
 これだけでも注目ですが、ビジネスマンという立場を利用したトークも実に上手かった。「ロジクールの皆さんにはいつもスポンサードしていただいていますが…今回はエネミーです!」という、SANKO社長の鈴木氏の言葉が会場を爆笑の渦に包み込みました。

 というわけで、有名企業による社会人リーグには、ショーとしての面白さも十分あります。


今回のイベントで気合の入ったポスターを作成したロジクールとSANKO

「大会の関連企業は本当に対戦ゲームをわかっているのか」

 そう思っているプレイヤーの方も少なくないでしょう。「企業は『ビジネス』としてゲームに接している」というふうに見えるからです。

 もちろん、大会をスポンサードする企業のご苦労は計り知れません。お金や製品を出して興味を持ってもらう。大会の運営陣や選手たちと連絡を取る。人を派遣して、大会の成り行きを見守る。それなのに大会で何かアクシデントがあると、そうした資金や準備が水の泡と化すこともある。大きなリスクを背負ってスポンサードされていると思います。

 それでも、純粋にそのゲームが好きでプレイしていたり、あるいは人生をかけてゲームと向き合っていたりするようなゲーマーとはやはり立場が違います。「ビジネスと人生の差」とでも言いましょうか。

 せっかく企業が熱意を持って日本でマイナーなゲームを盛り上げようとしているのに、そのゲームをプレイするゲーマーとの間には距離がある。ぼくはそれがすごく残念で、「この距離感は何とかならないのかな」と以前から思っていました。

 ところがA5Gのテストイベントは、プレイヤーと企業の距離感など完全になくしてしまったのです。

 「この日のために1ヶ月間も練習してきた」と口を揃えるロジクールとSANKOの皆さん。いずれも自分の得意なキャラクターが持っていて、真剣に戦術を組み立てる。試合が終わると、「おれのサポート良かったでしょ?」「社長うまかったですよ!」と、お互いの健闘を称え合う。

 ゲーマーであれば当たり前の光景かもしれません。でも、ビジネスマンたちが同じようにゲームをプレイする光景は、ぼくが対戦ゲームを続けてきた10年間で一度も目にしたことがなかったのです。

 「企業のビジネスマンも同じようにゲームをやるんだな」。このことが今回初めてわかりました。

 企業がゲーマーになって、両者の間の距離感がなくなりました。ゲーマーが今までに持っていた関連企業のイメージが覆ったともいえます。この点でも社会人リーグには関連企業のイメージ改善に絶大な効用があるのではないでしょうか。


左:選手席のロジクールチーム
右:試合後は両チームがお互いの健闘を称え合った


「企業に負担はないのか」

 ショーとしての面白さと、企業のイメージを変えること。参加する企業にはそれなりの負担があるでしょうが、以上の点だけでも、社会人リーグには行なう価値が十分にあると思います。

 SANKOの下川氏は練習の日々を振り返って「社内で新しいコミュニケーションが生まれた」と言っていました。だから参加企業にも社内活性化に良い効果をもたらすわけですが、やはりゲームの練習には時間がかかるものです。ぼくもサイトを更新しているだけとはいえ、そのためのライティングとゲームのプレイはまったく違う活動なので、大会に出るためにゲームの練習をしようとすると、精神的な負担がすごく大きくなります。

 中には「仕事をこなすだけでも精一杯なのに、ゲームの練習なんてできないよ」という社員の方もいるでしょう。そこで、冗談とはいえ、SANKO社長の鈴木が「1ヶ月間、練習で仕事が手につきませんでした」と話していたのを聞いて、それを面白く感じただけでなく、心配にもなった次第です。

 企業にとって無理のない形で参加できる社会人リーグが生まれることを、心から願っています。


両チームの各メンバーが試合後にそれぞれの感想を語った

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