2014年12月2日火曜日

Hearthstoneトッププレイヤーの視点とは。HeaarthstoneのWECG日本代表でドミニオンの世界チャンピオンでもあるmaruku0さんに、拡張セットや上達方法についていろいろ聞いてみた

 10月12日、e-sports SQUARE AKIHABARAで開催されたHearthstone日中大会のオフライン予選は、World E-sports Championshihp Games(WECG)の代表選手選考も兼ねていた。そこで優勝し、WECG日本代表選手となったのが20歳大学生のmaruku0さんだ。


maruku0さん

 ごく普通の学生に見えるmaruku0さんだが、幼い頃の将棋に始まってMMORPGや遊戯王オフィシャルカードゲーム、今ではHearthstone以外にLeague of Legends(LoL)や格闘ゲーム「ペルソナ4 ジ・アルティマックス ウルトラスープレックスホールド(P4U2)」といった幅広いジャンルのゲームをプレイする根っからのゲーマーである。しかも、今年の8月に開催されたボードゲーム「ドミニオン」の世界大会では優勝して世界王者となった。
 そんなmaruku0さんに今回、Hearthstoneの拡張セット「Goblins vs Gnomes」や不確定ゲームの上達方法、そして2014年ドミニオン世界選手権の感想などを聞いてみた。

目次


拡張セット「Goblins vs Gnomes」について

Mech同士のシナジーが楽しみ

nemuke:
 本日はよろしくお願いします。1月のWECGまであと2ヶ月となりましたが、準備のほどはいかがでしょうか。

拡張セット「Goblins vs Gnomes」

maruku0:
 そうですね…。「大会では勝つしかない」と思っているんですが、12月開催の予定が1月になって、しかも先日拡張セットが発表されてしまいました。「今からどうしよう」という感じです(笑)。

nemuke:
 大会に向けて準備しようにも、環境が変わってしまいますからね(笑)。拡張セットといえば現在(11月9日)、38枚の新カードの情報が公開されています。これについて期待していることはありますか?

maruku0:
 「デッキを作る楽しみが増えればいいな」と思っています。カードゲームの醍醐味って、自分で考えたコンボやデッキ構成を試していくことですよね。
 ところが今までのHearthstoneはカードの選択肢が少なくて、デッキを構築する楽しみがありませんでした。主流のデッキはどれも似たり寄ったりですし。

nemuke:
 たしかに。HandlockやMiracle Rogueといった、昔から存在するデッキがずっと大会で上位に食い込んでますからね。



maruku0:
 コンボといえばMiracle Rogueですけど、そのコンボの仕方もヘンテコなんですよね。「Gadgetzan Auctioneer+スペル全部」みたいな。

nemuke:
 Gadgetzan Auctioneerを引ければコンボ成立するけど、引けなかったらコンボにならない。「コンボ」というよりは「シナジー」に近いかもしれません。Undertakerとデスラトルの関係とも似ていますね。

maruku:
 ええ。ぼくは遊戯王を中1から高2までやっていたんですが、遊戯王はカードの種類が豊富で種族間の関連カードも多いんです。いろんなデッキを作る楽しみがありました。

 HearthstoneにもMurlockやBeastはありますが、効果がどれもパッとしない。その点で今回のMechはすごく楽しみです。Mech限定の強力な効果がたくさんあって、種族シナジーに特化したまったく違う種類のデッキが作れそう。

nemuke:
 なるほど。Mechについて特に注目しているカードはありますか?


maruku0:
 Goblin Blastmageがやばいなーと思ってます。4マナ5/4のステータスだけでも強いのに、Mechがいたら相手だけにランダム4点ダメージ。

nemuke:
 Mage専用カードですね。Madder Bomberなどと違って相手だけにダメージが飛ぶのが大きい。

maruku0:
 正直、「強すぎてぶっ壊れカードになるんじゃないか」という気がしています。なんで5/4なのか…。

ゲーム中の選択肢をもっと増やしてほしい


nemuke:
 Mechの話からは外れますが、Shrinkmeisterはどうなんですか? 海外コミュニティでは「Cabal Shadow Priestと組み合わせればYseraが取れる」といった話もありました。

maruku0:
 あれはたしかに強いんですけど、ぼくがほしかったPriestのカードじゃないですね。Priestでほしいのは2ターン目に単体でポンと出せるカードなんです。

 Priestって全Hero中唯一2ターン目のHero Powerの効果がないHeroなんですよ。だから2ターン目に出せるカードがなかったときにものすごく弱い。Shrinkmeisterは2マナではありますけど、ほかのカードとコンボ前提の効果じゃないですか。Shadow Word: Painと組み合わせも4マナです。後半の選択肢は広がるし、たしかに強いカードなんですけど、Priestの根本的な問題はまったく変わらないんです。たとえばFiery War Axeみたいなカードが追加されれば全然違うんですけどね。

nemuke:
 序盤の選択肢は変わらないわけですね。

maruku0:
 そう、だから序盤に動けないPriestやPaladinは使っていておもしろくない(笑)。DruidだったらHero Powerもあるし、Innervateを使うタイミング1つで展開がまったく変わるでしょう。ぼくが使っていて一番楽しいのはDruidです。全Heroにゲーム中の選択肢が増えてほしいな、と思います。

nemuke:
 クラス専用カードといえば、Bouncing Bladeはどうでしょう。相手にMinionが1体だけなら確定除去になります。いろいろな使い方ができるカードだと思うのですが。

maruku0:
 あれは弱いですね。劣化版Deadly Shotという気がします。あっちは3マナで相手のミニオンだけランダム除去なのに、こっちは自分のミニオンも巻き込むんですよ。少なくとも3マナの価値はないと思います。
 Acolyte of Painと合わせてドローを狙うにしても、6マナ3ドローですからね。エンレイジ持ちミニオンと組み合わせてコンボに使おうにも、そのミニオンを壊す可能性があるっていう…。

nemuke:
 なるほど。言われてみればたしかに劣化Deadly Shotですね。

maruku0:
 単体のカードでいえば、Explosive Sheepがけっこう面白いカードだと思います。2マナ1/1で全体2点ダメージを与える羊です。Zoo Warlockなどに突き刺さるんじゃないでしょうか。

nemuke:
 Unstable Ghoulと合わせて、対アグロの有力な選択肢となりそうですね。


maruku0:
 あとは相手の手札が多ければマナコストが減る、Clockwork GiantなんていうHandlock対策になりそうなカードもありますが…。これ12マナじゃなくて10マナだったらよかったんですけどね。相手の手札が10枚あるときに2マナで出せても、そのときは相手にもMountain Giantが出てきてるじゃないですか。

nemuke:
 たしかに。でも10マナだったら恐ろしいことになりそうですね。NaturalizeColdlight Oracleといった相手にドローさせるカードと合わせれば、3ターン目に0マナのClockwork Giantを2体出す、なんてこともできますよ。そして次のターン、相手のディスカードが確定してしまう。

maruku0:
 それもそうですね。

特定のカードを引けるか引けないかで展開が変わってしまうのは問題

nemuke:
 ランダム要素についてはどうでしょう? 今回発表されたカードのランダム要素があまりにも高いため、海外コミュニティでは「ますます運ゲーが加速するんじゃないか」という声も上がっています。


maruku0:
 ランダム要素を持つカードがどれも弱くてなんとも言えませんね。死亡時にランダムでレジェンダリーや4マナ・2マナのミニオンが出るPilotシリーズもステータスがあまり強くないですし。Ogre Warmaulなんて、思わず笑ってしまいました。「『50%で攻撃対象を間違える』ってなんだよ!」って(笑)。

nemuke:
 あれは…(笑)。逆に今のHearthstoneで「これはちょっと」というカードはありますか?

maruku0:
 Undertakerですね。カードパワーが高すぎて、引けたときと引けなかったときでゲームが別物になってしまう。拡張セットで匹敵する序盤のカードが出てくるか、2マナ2/2にでもしないとだめでしょう。

不確定ゲームで上達する方法

うまい人のプレイを見て検討するのが上達の近道

nemuke:
 maruku0さんはドミニオンとHearthstoneでトップクラスになっていますが、両方のゲームで上達するのに共通して言えることはありますか?


maruku0:
 そうですね…。1つは「うまい人のプレイを見ること」でしょうか。どちらも運の要素が強いゲームですから、1人でプレイするだけでは「自分の選択が正しかったのかどうか」、なかなかわからないと思います。

 うまい人の1つひとつのプレイを客観的に見ていると、「何が強いプレイなのか」がよくわかります。オフラインの集まりなら、ほかのプレイヤーの手札状況も見られますからね。

nemuke:
 Hearthstoneでは相手の手札が見えないので、勝ったとしても「なぜ勝ったのか」がはっきりとわかりませんよね。リプレイ機能もついていないので、試合後も検討できませんし。
 将棋や囲碁では、ゲームで現れなかった変化について、対局後に相手と検討しあう「感想戦」が上達で重要とされていますよね。

maruku0:
 Hearthstoneでも、実物のカードを使って対戦できれば上達が早いと思います。実物ならターンを巻き戻したりして「ここでこのカードを使っていたらどうなったのか」という検討ができますから。遊戯王などアナログのトレーディングカードゲームでは、1人でデッキを回して使用感やほかのデッキとの相性を確かめたりします。

警戒すべきカードとそうでないカード

nemuke:
 検討の時間が重要ということですね。そういえばHearthstone日中大会後に「(トップデッキを含む)The Black Knightを警戒したプレイを友だちと研究する」と仰っていましたが、対策は見出せたのでしょうか。

maruku0:
 いや、無理でした(笑)。「The Black Knightを警戒してトーントを出さないプレイをすると、相手がThe Black Knightを引かなかったときに勝てない」という結論になりました。諦めるしかないですね。The Black Knightをトップデッキする確率も、せいぜい残り20枚の中の1枚ですから…。


Hearthstone日中大会でTauntをつけたOasis SnapjawにトップデッキのThe Black Knightを当てられてしまった場面

nemuke:
 「The Black Knightを警戒して勝てる確率」と「警戒しないで勝てる確率」を比べれば、後者のほうが高いというわけですね。

maruku0:
 はい。これがデッキに2枚入れられるカードならまた変わってくるんですけど。デッキに1枚しか入らない、レジェンダリーカードですからね。

 Hearthstoneでは、「警戒すべきカード」と「警戒してはいけないカード」を見極める必要があります。たとえばWarriorのBrawlは警戒してはいけないカードです。

 Warriorの弱点は「2点以上のダメージを与える全体除去がないこと」なんですが、「Brawlで自分だけ全体除去される可能性」を警戒してミニオンを出さなかったらその弱点が消えてしまう。その結果、WarriorというHeroがものすごく強くなってしまいます。

nemuke:
 11月8日に行われたHearthstone World Championship 2014の準決勝でも、Kolentoが「KranichのBrawlを警戒してミニオンを出さなかったら、ワンターンキルのコンボで潰されてしまった」という場面がありましたね。

maruku0:
 はい。これはもう、「Brawlが決まったらどうしようもない」と諦めるしかありません。決まってしまったら「そういうゲームだった」ということで(笑)。


Kranich vs. Kolento - Quarter-finals - Hearthstone World Championship 2014
Kolento(上)はBrawlを警戒してLoathebを出さなかった結果、相手のワンターンキルのコンボで倒されてしまった


Hearthstoneにはまだ「本」がない



maruku0:
 上達に役立つことのもう1つは、「グループで試行錯誤する」ことでしょうか。

 ドミニオンの話ですが、「礼拝堂」という、いらないカードを捨ててデッキを圧縮できるカードがありました。ドミニオンはプレイ中にカードを集めてデッキを回していくゲームです。デッキに無駄なカードが少なければ、それだけ効率が上がって強くなります。始めたばかりの頃は皆「礼拝堂が強い」と思って、そのカードを中心にプレイしていました。

 ところが何度もやっていくうちに、「デッキを圧縮するよりも、ドローを加速したほうが強いのではないか」ということがわかってきました。実際「デッキ圧縮を優先したデッキ」と「ドロー加速を優先したデッキ」で戦ったら、ドロー側が勝つんです。こういうことも、グループに入らないとわからないことが多い。いろんな人に教えてもらったり、実際にやられたりすることで初めて、上達できるのだと思います。

nemuke:
 ドミニオンはアナログのボードゲームですから、集まって対戦する中でうまい人のプレイを見たり、戦術を教えてもらったりするのがやりやすそうですね。

maruku0:
 そうですね。ぼくは「木曜ドミニオン会」という、毎週木曜日の集まりによく参加していました。そこで世界チャンピオンといったレベルの方々に教えてもらったおかげで上達できたと思っています。

 逆に、こうした方法以外で上達するのは難しいと思います。Hearthstoneにはまだ「本」がないんですよね。将棋でいう定跡書のような、「こうするのがいい」という考え方が書かれた本です。デッキガイドはありますけど、それだけじゃ絶対にわからない部分ってあるじゃないですか。それに、詰め将棋のようなリーサルダメージのパズルはあっても「次の一手」とかはないですよね。

 なので、Hearthstoneではそういうものを読んで「1人で考える」ことができないんです。結果的に、勉強する方法が「うまい人のプレイを見る」「うまい人たちのいるグループに入る」以外にほぼなくなっています。

ドミニオンとHearthstoneの違い

ドミニオンは多人数のバトルロワイヤル

nemuke:
 ドミニオンとHearthstoneはゲームとしてどのぐらい違っているのでしょうか?
 多少形式は違えど、ドミニオンはプレイ中に多彩な効果のあるカードを集めてデッキを回していくゲームですから、Hearthstoneと共通する点も多いと思うのですが。

maruku0:
 ドミニオンは4人で対戦するバトルロワイヤルのゲームなんですよ。Hearthstoneと最も異なるのはその点ですね。「ほかの人がどんなふうに動くか」でゲーム展開がまったく変わってしまうんです。

nemuke:
 たとえば誰かが自分を邪魔するカードを使ったり、とかですか。


相手に邪魔なカードを押し付ける
ドミニオンの妨害カード「魔女」


maruku0:
 はい。ドミニオンのカードに「特定の誰かに不利益を与えるカード」はないのですが、「使うとほかのプレイヤー全員に不利益を与えるカード」は存在します。デッキによっては、その不利益にほかのデッキよりも影響を受けてしまうものもありますから、そういった方法で誰かを狙い撃ちにすることもできます。

 ドミニオンでは「どんなデッキを組むか」という方針が重要なのですが、卓にいる人間の実力がわからないと、その方針も決められません。

 ドミニオンでは「属州」と呼ばれる点数カード(全12枚)がなくなるとゲームが終わり、その時点で「点数カードの合計が最も多いプレイヤー」が勝利します。4人戦だと皆が3枚ずつ取れば均等になるので、「属州を4枚取れるデッキ」を組むのが基本です。

 でも卓に1人初心者が混じっていて、その人がまったく属州を取らないように動いていたら、属州を4枚取っても勝ちにはなりません。もし自分が「属州を4枚取った後に失速するデッキ」を組んでいた場合、そのプランが完全に壊れてしまいます。

Hearthstoneで実力を分けるのは知識


nemuke:
 逆に、1対1のHearthstoneのほうが不確定な要素が少ないから、実力差も出やすくなるのでしょうか。

maruku0:
 難しいところですね。Hearthstoneは同じデッキを使えば運の要素が大きくなりますから。

 Hearthstoneの実力差はデッキやカードの知識という形で現れてくると思います。「相手にどんなデッキの種類があるか」がわかっていれば正しいマリガンができますし、最初に現れたカードを数枚見ただけで相手のデッキタイプがつかめたりします。

 クラス別に言えば、「Priest相手でShadow Madnessを警戒して動く」とか、「Hunter相手にトラップの種類を見極めて戦う」とかですね。

nemuke:
 Hearthstoneだと大会とラダーで、使うデッキや戦い方も変わってきますよね。

maruku0:
 ぜんぜん違いますね。レジェンドの上位なら別なんですけど、ラダーを駆け上がるだけなら、正直「HunterかZoo Warlockを使っておけ」という話になります。「30分ゲームで1回勝つ」のと「5分のゲームを6回やって4勝2敗」だったら絶対後者のほうがいいですから(笑)。

nemuke:
 「早いデッキ使えよ」という話になりますよね(笑)。

maruku0:
 ええ(笑)。レジェンダリーになりたいなら、基本的にランク5まではアグロを使って、対戦相手のデッキにアグロが増えてきたら対アグロのPriestを使っていけばいいと思います。ぼくがレジェンダリーに到達したのはHunterとDeathrattle Priest、そしてDruidでした。

ランクを上げるのに最も効率がいいのは強いデッキをコピーすること

nemuke:
普段はどんなふうにHearthstoneをプレイされているんですか?

maruku0:
 電車の中や授業の合間にIpadでやってます。やるときはガッツリやりますね。8月なんて、ランク5から1日でレジェンダリーに行ってました。ただひたすらHunterを回すだけの作業です(笑)。

nemuke:
 Hearthstone World Championshipの予選参加資格である「ラダー上位16位以内」を目指していた時期はないんでしょうか?


maruku0:
 ありました。16位を目指してHunterを回していたらだんだんHunterに飽きてきて、別のHeroを使ったら負けまくってしまった(笑)。最高ランクは31位のままです。

 今から振り返れば、「試行錯誤して強くなりたい」って思っちゃったのが間違いだったんですよね。そんなものはいらなかった(笑)。

 ランクを上げるのに一番効率がいいのはトッププレイヤーのデッキをコピーして使うことです。トッププレイヤーが使っているのにはやっぱり理由がありますから。それを「こっちのほうが強いかな」と自分で細工してしまうと、どんどんランクが落ちていきます(笑)。

2014年ドミニオン世界選手権優勝

初めての海外を1人で現地飛行機乗り換え

nemuke:
 2014年のドミニオン世界選手権大会はいかがでしたか? 当時の様子はTwitterのまとめ記事で拝見させていただきましたが…。これ、大変でしたね(笑)。初の海外で1人、しかもアトランタ空港での飛行機の乗り換えまで。

maruku0:
 そうですね(笑)。英語ができなかったので面倒だったんですけど、ネットが使えたのでなんとかなりました。

 空港で渡された航空券にゲート番号などの場所が全部記載されていたので、乗り換え自体は大変じゃなかったです。チェックインなど空港の手続きも、列の前の人がやってることを見て、それに倣えばいいので簡単でした。

試合前のmaruku0さんのTwitter投稿

nemuke:
 現地で困ったことはなかったんですか?

maruku0:
 必要なコミュニケーションはギリギリ取れましたね。ホテルから会場に行くときはホテルの人にタクシーを呼んでもらいました。タクシーの運転手には地図を見せて目的地を伝え、あとは「キープ・ザ・チェンジ(おつりはいりません)」としか言いませんでした(笑)。お釣りをもらうのがめんどくさかったので(笑)。

 ただ、部屋の鍵を忘れてしまったときは危なかったですね(笑)。一度、ホテルの鍵を部屋に忘れて出てきてしまったときがあったんです。
 「部屋の鍵を中に忘れた!」ということをホテルの人に伝えたところ、「身分証明書はあるか」「どこで予約した」といったことを聞かれました。それに答えたら、なんとか新しい鍵をもらえたんです。


直後のTwitter投稿

優勝しても赤字

nemuke:
 大変でしたね。初の海外で「怖いな」と思ったことはありませんでしたか?

maruku0:
 「どうにかなるだろう」と開き直ってました(笑)。総じてあまり準備はしなかったです。旅行ガイドや空港の地図は見てませんでしたし…。「いざとなったら大使館に駆け込めばいいかな」と(笑)。

nemuke:
 大胆ですね(笑)。

maruku0:
 WECGでは誰か人が付いてきてくれればいいんですが(笑)。ただ、飛行機やホテルを向こうが手配してくれるのは楽でいいですね。

nemuke:
 ドミニオン世界選手権のときは航空券やホテルも全部自分で手配したんですか?

maruku0:
 はい。航空券はHISのお店に直接行っていろいろ聞いて、ホテルは「エクスペディア」という一番有名そうなサイトで予約しました。

nemuke:
 費用は全部でどのぐらいかかったんですか?


maruku0:
 25万円ぐらいでしょうか。飛行機代は当初18万だったんですが、日本予選運営のホビージャパンから事前に聞いていた日程と、実際の日程が違っていました。現地の運営から送られていた英文メールには正しい日程が載っていたので、これは僕の確認ミスでもあります。それで現地で1日延長することになり、+3万円されて21万円ですね。

 ホテルは飛行機と違って1泊分の料金が増えただけだったんですけど、探し始めたのが渡航の1ヶ月前だったので高いホテルしか残っていませんでした。ドミニオン世界選手権会場のGenConはアナログゲームの一大イベントなので、世界中から人が集まってくるんです。それで、1ヶ月前には会場近くの安いホテルが全部埋まってました。ぼくが泊まったのは都心から離れた場所にあるビジネスホテルです。4泊5日で3万円でした。

 これにタクシー代などその他の費用を加えれば25万円ぐらいです。

nemuke:
 25万円! 結構な金額ですね。せめて3ヶ月前の予約なら3分の2ぐらいにはなったのかもしれませんが…。

maruku0:
 日本予選がもう少し早く開催されていればよかったんですけど…。今回ホビージャパンから渡航補助費として10万円と、世界選手権の優勝賞金として1000ドル(約10万円)の合計20万円をもらったんですが、それでも約5万円の赤字でした。

海外は大変だけど無理ではない

maruku0:
 実はドミニオンの日本予選では、ぼくが優勝したわけじゃないんです。優勝したルネさん(*1)が仕事の都合でいけなってしまって。日本予選では1位以外の順位を記録していなかったので、「2位の人に決定」することもできなかったんです。それで、「誰が行く?」という流れになったんですが、優勝しても赤字になるし、大変だから誰も行く人がいなかった(笑)。「じゃあぼくが」と言ってぼくに決まりました。
*1 ルネ:2010年ドミニオン世界大会優勝者。Hearthstoneでもレジェンダリーの高ランクに位置しており、4gamer.netにHearthstoneのコラムを連載している。

nemuke:
 そうだったんですか…。でも、よく決断しましたね。初めての海外で英語が苦手なのに、飛行機とホテルの手配から現地の移動までを全部1人でやるっていうのは、普通の人にはなかなかできないことだと思いますよ。

maruku0:
 たしかに面倒でしたし、思った以上に大変なこともあったんですが、だからといって無理なことではないと思います。渡航日が近づいてきたらもうキャンセルできませんし(笑)。

nemuke:
 ところで、Twitterのまとめを見ていたら「アメリカで困ったこと:Hunterに勝てない」とありましたが、これは…(笑)。

maruku0:
 ホテルで暇だったので…(笑)。「ドミニオンっていまさら練習してもどうにかなるものじゃないよな」と思って、友だちとスカイプしながらHearthstoneをやってました(笑)。



GenConは「アナログゲームの東京ゲームショウ」

nemuke:
 ドミニオン世界大会が内部で開催された「GenCon」はいったいどんなイベントだったんでしょうか。アナログゲームの祭典ということなのですが、日本の写真つきレポート記事はホビージャパンさんのブログ記事(*2)以外にアップされてなかったんですよね。

maruku0:
 日本語できる人がぼくを含めて10人もいませんでしたからね…。
 会場はTokyo Game Showのアナログゲーム版のような感じでしょうか。たくさんのアナログゲームが展示されていました。ドミニオン世界選手権はその中の、ほんとうに小さなブースの中でやってたんですよ。いわゆるオタク文化向けのイベントなので、コスプレイヤーさんたちも至る所にいましたね。

 アナログゲームのイベントではあるんですが、LoLやHearthstoneのブースもあって、ゲームの試遊台が置いてありました。e-sportsを広めようという団体が主催していたみたいです。


Hearthstoneのこれから

「上達するのが楽しい」からゲームを続けていられる

nemuke:
 maruku0さんがHearthstoneを始めたのは何がきっかけだったのでしょうか。

maruku0:
 今年の2月に友人に誘われて始めました。Twitterで話題になっていて気になっていたんですが、ちょうど大学受験の真っ最中でしたから、「これは始めちゃいけないな」と思っていたんです。ところがスカイプを開くと友だちが「やらない?」って言ってきたので…(笑)。

nemuke:
 誘われると断れないですね(笑)。maruku0さんはドミニオンとHearthstoneのほかにも将棋やLoL、P4U2等のゲームも多くプレイしていますが、その中で何が一番好きなゲームなんでしょうか?


「ニトロプラスカードマスターズ」
というドミニオンがベースになった
ボードゲームで優勝した際の写真

maruku0:
 なんでしょうね。今一番やりたいのは格闘ゲームですが(笑)。ずっとやってきたのは将棋です。「子供たちに将棋を教える」というアルバイトをしていたこともあります。

nemuke:
 「将棋のプロになりたい」という気持ちでやっていたことは?

maruku0:
 うーん、「プロになりたい」というのは将棋をやっている人なら誰でも思うことなんじゃないでしょうか。ただ、ぼくがそこまでガッツリやっていたかというと、そうではないですね。受験勉強もしていましたから。

nemuke:
 ゲームをプレイすることについて、ご両親から何か言われることはありませんか?

maruku0:
 特に言われたことはないですね。「ゲームをやりすぎるな」と言われたことはありましたが、それは「目が悪くなる」というのが理由でした。「ゲームをやると馬鹿になる」といったことは言われていません。ただ、両親はHearthstoneをやったりはしないです。ゲームが嫌いではないですけど、好きでもないという感じですね。

nemuke:
 めずらしいご両親ですね。「ゲームなんて」と嫌がる親御さんもいますから。

お金が絡まない文化は廃れる

nemuke:
 最後にオフラインイベントを主催する者として伺いたいのですが、maruku0さんはどんなHearthstoneのイベントだったら出たいと思いますか?


「ゆるふわHearthstone会」のイベント風景

maruku0:
 うーん、賞金がない限りぼくは出ないですね。Hearthstoneはオンラインでやれますから、「出なくてもいいかな」って思っちゃいます。

 逆に少しでも賞金が出るならぼくは出たいですね。5000円でもうれしいですし、2000円でも…ほかの人は出ないかもしれませんが、ぼくは出ます。たぶん、賞品よりも賞金を用意したほうが人が集まるんじゃないでしょうか。

 ぼくが思うに、「お金が絡まない文化」って結局廃れると思うんですよ。少なくとも流行らせることはできない。Hearthstoneもオフラインでやるだけでは、たぶん身内で盛り上がるだけかもしれません。
 Hearthstoneが本当に好きな人は賞金がなくても集まると思うんですけど、それ以外の人に広めるには、賞金が必要なんじゃないかと思います。

nemuke:
 たしかに。どの分野の大会でも、話題になるのは「賞金額の大きさ」ですからね。

Hearthstone日中大会で
チームメイトを応援する選手たち

maruku0:
 ただ、やるにしても主催者が「自腹を切る」んじゃなくて、スポンサーなどの存在で利益が生まれる形にしないとダメだと思います。それではあまりにも経済的に未発達ですから。

 日本でそれが成立しているのって、ウルトラストリートファイターIVの「TOPANGA League」だけなんですよね。スポンサーがいて、チケット代金がついて売れていて、人気プレイヤーもいる。収益体制ができてるんです。利益が生まれるから新しい広告を出せるので、新しいスポンサーや視聴者もどんどん入ってくるんです。

 Hearthstoneでは今、この流れはないですよね。見る人もいないし、スポンサーもいない。

nemuke:
 国産ゲームだったら「ゲーム運営会社がイベントを主催する」流れもあるんですけど…。日本にBlizzardがいない以上は厳しいですね。海外では寄付を募る流れも活発のようですが。

maruku0:
 おもしろいのが、日本人って「寄付はしないけど物は贈る」んですよね。たとえばAmazonのウィッシュリストとか、届く人は山のように贈られてくるじゃないですか。

 東京ゲームショウで開かれたLoLの大会(*3)も、「Amazon経由でスポンサーのロジクールの製品を買ったら利益の一部が賞金に還元される」という方式でした。格闘ゲームでも「ムラタ式最大反撃」という300円の栄養ドリンクがあるんですけど、それを買うと利益の一部が格闘ゲームに回るんです。

 こういうような「物を贈る形での寄付」が日本では効果的なんじゃないかな、と思います。
(*3)LJ LEAGUE ALL☆STAR~ 夢の祭典/LEAGUE OF LEGENDS JAPAN LEAGUE

nemuke:
 「物を送る形での寄付」、新鮮な視点ですね。今後のイベントやサイト運営にも生かしていければと思います。本日はどうもありがとうございました。

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