2015年1月30日金曜日

大会関係者と選手たちが織り成すストーリー。5つの種目の日本一を決定するゲームイベント「Red Bull 5G 2014」観戦レポート(後編)

 2014年12月21日に東京・秋葉原で開かれた5つの種目の日本一を決定するゲームイベント「Red Bull 5G 2014」観戦レポートの後編です。(前編中編
▲試合に臨むぷよぷよテトリスのHBM選手(左)とselva選手(右)

目次

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2年間の雪辱 ぷよぷよテトリス

 大会スコアは1-2となって、昨年王者の東チームが逆に追い詰められる展開となった。パズルジャンル(ぷよぷよテトリス)とファイティングジャンル(ウルトラストリートファイターIV)の2種目が残る中で、東チームキャプテンのポイガマン選手はこう宣言した。「パズルジャンルでお願いします!」


▲試合前に相対するぷよぷよテトリスの両選手

 私はこのぷよぷよテトリスの試合が、今大会のハイライトだと思う。

 西側ぷよぷよ代表のKamestry選手は唯一3年連続で出場しているプレイヤーだが、過去2回、ともにチームスコア2-2で始まった最終戦でくまちょむ選手に破れ去った。「チームを敗北に沈めてしまった」。その悔恨の念はKamestry選手のドキュメントムービーからも痛いほど伝わってきていた。

Red Bull 5G 2014 ドキュメントムービー:Kamestry&せーは編

 「ついに2年間の雪辱を果たすときがきた」。ガッツポーズをして席に着くKamestry選手。2度の敗北が彼に悟りをもたらしたのだろうか。その表情に迷いや恐れは感じられない。「冷静に、かつ死に物狂いで勝ちに行く」という覚悟を決めていたようだ。

ぷよぷよテトリス

 ぷよぷよテトリスは、1984年にロシア(当時ソビエト連邦)で教育用ソフトウェアとして生まれた元祖落ち物パズルゲーム「テトリス」と、テトリスブームを受けて1991年に国内で誕生した「ぷよぷよ」を融合させた革新的なゲームである。

 ぷよぷよテトリスの大会を開催するにあたって、Red Bull 5G 2014は予選会で「ぷよぷよ部門とテトリス部門に分けてトーナメントを開催し、それぞれのゲームの代表にチームを組ませて2対2で対戦させる」というルールを採用した。

 しかし、この2種の落ち物パズルはルールが大きく異なる。ぷよぷよは「同じ色が4つ、くっつくと消える」のに対し、テトリスは「ブロックが一列に揃うと消える」。2種の落ち物パズルが内在する2対2の試合とは、一体どんなゲーム展開になるのだろうか。


▲2つの異なる落ち物パズルが内在する、不思議な光景

 実況解説を担当したALF氏は2対2のルールの特徴を試合前にこう述べた。

 「テトリスは攻撃(ブロックを消す)がとにかく早いので、序盤から相手を妨害していくことができます。一方ぷよぷよは連鎖を組み立てるのに時間がかかるので攻撃に入るまでが遅いのですが、その代わりに一撃が重いんです。RPGに例えれば、テトリスが味方を守る戦士でぷよぷよが敵を殲滅させる魔法使いのようなポジションですね。2対2のルールでは『テトリスが時間を稼いでぷよぷよが強烈な一撃をお見舞いする』という、連携の取り方が重要になってきます」


▲「速度が速いテトリス」と「大連鎖を狙うぷよぷよ」の対比

一瞬の暗転

 試合が始まった。まずテトリスの選手がお互いに消し合って攻撃する(おじゃまブロックを相手に送りつける)。カタカタカタカタ! と、テトリスがパズルを組み上げる音が会場に大きく響き渡った。


▲恐るべき速度で消し合っていくテトリスと連鎖を積み上げるぷよぷよ

 テトリスの両者(西のせーは選手と東のHBM選手)は一方も譲らぬ攻防を繰り広げるが、一部相殺しきれなかったおじゃまがぷよぷよの両者(西のKamestry選手と東のselva選手)に降り注ぐ。ぷよぷよの両者はそれも承知しており、おじゃまによって連鎖の起点が埋もれることがないように、連鎖を高く積み上げて対応していく。

 そしてぷよぷよの連鎖が起動。お互いにおじゃまを送りつけて相殺していく流れなのだが、連鎖数はselva選手のほうがやや少ないため、相殺しきれずに大量のおじゃまぷよが東チームの両者のフィールドに降ってきた。ゲームセット。ここまでわずか40秒程度の出来事であった。


▲東チームテトリスのHBM選手(左)とぷよぷよのselva選手(右)

1つの視点に絞って観る

 とはいえ、ぷよぷよテトリスはゲーム展開があまりにも速いため、何が起きているのかを理解するのが難しかった。

 これには「1つの画面に4人のフィールドが表示される」という「情報量の多さ」も関係しているのだろう。ぷよぷよもテトリスもパズルゲームだ。やり込んでいない人間には「1つのフィールドのパズルがどんなふうに組み上がっていくのか」を観るだけでも精一杯である。それを4人分同時に見るなど不可能に近い。

▲ぷよぷよテトリス対戦時の会場。
会場では選手席や選手の表情といったゲーム外の情報も多いので、
同じ試合でも「オンラインの配信の方が情報量が少なくて観やすい」こともあるだろう

 私はぷよぷよもテトリスも触ったことがあるのでまだ理解しやすかったのだが、どちらも触ったことのない人には、高速なゲーム展開と情報量の多さに圧倒されてしまいそうだ。実際、会場にいた私の知り合いも「ゲーム展開が早すぎてついていけなかった」と口にしていた。

 この点は「どんなふうに観ればいいか」を事前に観客に伝えておくと良かったかもしれない。私がぷよぷよテトリスの観戦で心がけていたのは「視点を1つに絞ること」だった。主にKamestry選手のフィールドに絞って観ていたところ、最初はパズルを追いかけるだけで精一杯だったのが、徐々にKamestry選手の「動き」が見えてきた。基本的にはせーは選手に守りを託して大連鎖を組み上げていくのだが、時折「少ない連鎖を連続で出して相手のリズムを崩す」といった攻撃も織り交ぜていたのだ。「様々な攻撃で相手をかく乱すること」は、どんなゲーム・スポーツの試合でも効果的な戦術である。

 恐ろしいのはこういった戦術の駆け引きを、選手たちがあの速度でやってのけることである。すばやく連鎖を組み上げるKamestry選手と、それに一歩も遅れない東チームの選手たち。「彼らのプレイは尋常ではない」という印象を強く持った。このように選手たちの駆け引きを知ることができたのも、やはり「視点を1つに決めていたこと」にほかならない。

Red Bull 5G 2014 FINALS ぷよぷよテトリス 試合動画

 3本先取の試合はフルセットまでもつれ込む接戦となった。どんなゲーム・スポーツの試合でも、極限状況で最後に物を言うのは精神力である。東と西の実力はほぼ互角に見えたのだが、勝利を手にしたのは過去2年の雪辱に燃えるKamestry選手とせーは選手のペアだった。

 Kamestry選手は「ついにやり遂げた」という表情で舞台を降り、チームメイトに祝福されたのだった。

 Red Bull 5G 2014 Finals:東 1-3西

ALF氏の解説

 この接戦を語る上で欠かすことができないのが、簡潔な言い回しで試合を盛り上げていたALF氏の解説(どちらかというと内容は実況に近かったが)だ。

 ALF氏は解説で「Kamestry選手のカウンターが炸裂するか」「HBM選手の形が崩れているぞ」「紙一重の攻防だ」というような、「一言で状況が伝わるフレーズ」を多用していた。


▲解説を担当したALF氏

 これにはぷよぷよテトリスのゲーム速度と関係がある。目まぐるしく進行するゲームで、逐一「Kamestry選手が今、4連鎖まで完成していますね。ここで黄色のぷよを左に組めば5連鎖になりますが…」といった詳細な説明をしている時間はない。歯切れの良い言葉を選び、「今起きていること」を伝えるしかないのだ。みんなのゴルフ6の落ち着いた解説とは対照的である。

 「正直、精一杯でした。今回の解説はぼくなりに工夫した結果です」と、ALF氏は試合後に私に打ち明けてくれた。中でも大変だったのはテトリス部分の解説だったという。ALF氏自身は国内大会で何度も優勝に輝いているぷよぷよのトッププレイヤーなのだが、テトリスは専門外なのだ。

 「解説では『一瞬でぷよぷよの状況を記憶してプレイヤー同士の駆け引きを伝え、なるべくテトリスの動きを見る』ように心がけていました。実況の練習はしたものの、社会人ということもあってテトリスをやりこむ時間がなかなか取れなかったんです。

 準備では『いかに効率よくテトリスのキーポイントを理解するか』に専念しました。たとえば『テトリスの攻略サイトを片っ端から読んで専門用語や戦術について学ぶ』といったテトリスの勉強です。そして「ぷよぷよテトリス交流会」というイベントをきっかけに仲良くなったテトリスプレイヤーの方々に私の解説を聞いてもらい、用語や状況説明に誤りがないかどうかをチェックしました。決勝で間違った解説をするわけにはいきませんから」

 本大会で採用された「2対2のルール」もALF氏を苦しめた。

 「誰も知らない未知の領域でした。降ってくるおじゃまの量や戦術などが1対1と全く異なるのですが、プレイしている人がほとんどいなかったんです。

 まずは2対2の『選手目線でのイメージ』と『観客目線のイメージ』を、それぞれ頭で理解することから始めました。一度練習を兼ねて東日本代表チームが集まったことがあるのですが、そこで私も2対2を自分でプレイしてみたり、ぷよぷよテトリス代表のプレイを観たりしたんです。そして2人の練習を観て同ルールの感触を確かめつつ、解説を練習しました」

 ALF氏は去年と一昨年のRed Bull 5Gでも「ぷよぷよ!!」の解説を務めているベテランであるが、今回の解説はその何倍も難しかったようだ。

 「超スピードでやり合うゲームですから、1対1でも解説しながら2つのフィールドを目で追いかけるのは至難の業なんです。今回はそれにテトリスが加わる上、残り人数によって降ってくるおじゃまの量も変わります。両チームの総合的な形勢判断もしないといけません」

 解説の負担は大きかった。しかし「今大会でぷよぷよテトリスの2対2を採用したことには大きな意義がある」と言って、ALF氏はインタビューを締めくくった。

 「ぷよぷよとテトリス、この2つのタイトルのコミュニティは今まで完全に分かれていたんですが、今大会に採用されたことをきっかけに交流が生まれました。大会が終わってからもぜひ、両者間の交流が続いていってほしいですね」

最終種目 ウルトラストリートファイターIV

 西チーム優勝が決まった今大会の最終種目はファイティングジャンル「ウルトラストリートファイターIV」だ。今もなお語り継がれる「背水の逆転劇」で有名な梅原大吾選手の存在もあり、(特に、メインではない人間にとって)「格闘ゲームといえばストリートファイターシリーズ」という印象がある。Red Bull 5Gでも3年目にして「ついにウルトラストリートファイターIVが採用された」という印象だ。

 西チーム代表のひかりん選手は細身で女性のようなハイトーンの声が特徴的である。一方で東チーム代表のaiai選手はがっしりとした体格のシステムエンジニア。これまでに何度もしのぎを削り会ってきたという2人だが、その見た目は対照的だ。


▲左:ひかりん選手 右:aiai選手

 彼らがウルトラストリートファイターIVで使っているキャラクターも興味深かった。ひかりん選手は巨体のキャラクターの「狂オシキ鬼」、aiai選手は細身の女性キャラクター「ジュリ」という、自分の外見とは正反対のキャラクターを使っていたのだ。

 ゲームの魅力の1つに、「自分の考え方が反映される」というものがある。現実の姿がどうあれ、「ゲームとどう接するか」は自分で決めるしかないからだ。そこに良くも悪くも人の個性が表れる。

 現実ではシャイでも内面に確固たる力強さを秘めている人はゲームで大胆な攻めを行ってくるし、大雑把な印象でもやるべきことをやろうとする人は、ゲームできわめて論理的に戦術を組み立ててきたりする。

 外見とは正反対に見えるひかりん選手とaiai選手のキャラクター選択にも、「こういうふうにしたいんだ」という彼らの考え方が反映されているようで興味深かった。


▲左:ジュリを選択するaiai選手 右:ひかりん選手の狂オシキ鬼(左)がaiai選手のジュリに襲い掛かる

勝負のあや

 ところが、その2人の試合が決まるのはあっという間だった。合計試合時間は約7分。ひかりん選手が3-0で、しかも試合中のラウンドを1本も落とさず完勝したのだ。

 ちょうど西チームの優勝が確定した後だったから、チームの勝ち目がなくなった東チームのaiai選手が気落ちしたように見える1戦ではあった。しかしウルトラストリートファイターIVのように相手の動きに対する素早い反応が問われるゲームでは、ちょっとした緊張や焦りで「動きがまったく噛み合わなくなる」ことも多い。ましてや秋葉原の大舞台となっては、自宅で普段オンライン対戦するようには力を出せないだろう。

 海外の大会でも、それまで順調に勝ち進んできた選手が、決勝ではまるで力を発揮できず0-4で敗北することがよくある。aiai選手には不本意な結果となったが、これも無数の大会で生まれる1つのドラマに過ぎない。

 Red Bull 5G 2014 Finals:東 1-4 西

Red Bull 5G 2014 FINALS ウルトラストリートファイターIV 試合動画

表彰式

 全種目の試合が終了し、表彰式が行われたのは19時になっていた。最初に行われたバイキングぽいぽい!!から順に各種目の勝利選手たちが舞台に上がり、解説者たちがトロフィーを贈呈した。


▲バイキングぽいぽい!!:左からポイガマン選手、解説のブンブン丸氏、バイキー選手


▲グランツーリスモ6:左からアユム選手、解説の呉圭崇氏、ねぎ選手


▲みんなのゴルフ6:斬鉄剣選手(中央)、解説の小番芳範氏(右)


▲ぷよぷよテトリス:Kamestry選手(左)、せーは選手(中央)、解説のALF氏(右)


▲ウルトラストリートファイターIV:ひかりん選手(左)、解説のアール氏(右)

 こうしてRed Bull 5G 2014は4種目を制覇した西チームの優勝で幕を閉じた。2年連続で敗れた西チームにとっては念願の初優勝である。

 舞台に西チームの選手たちが並び、マイクを向けられたKamestry選手が西チームキャプテンとしてインタビューに答えた。涙声だった。

 「最高の瞬間です」。

▲今までの戦いを振り返るKamestry選手

 大スクリーンではスタッフロールが流れた。パズル部門、ファイティング部門というふうに、部門別に選手とスタッフの名前が表示される。合間に映るのはオフライン予選会の映像だ。勝利に喜びの声を上げる人もいれば、敗北に悔しさを噛み締める人も映っていた。

 「予選会には延べ2万人が参加してくれました。Red Bull 5Gはそんな皆さんのおかげで成り立っている大会なんです」と、関係者の1人が教えてくれた。決勝には出られなくても、予選に参加し、応援してくれる人たちによって大会は支えられている。このエンディングは、そんな人たちに向けたメッセージなのだろう。


▲大会のエンディングにはスタッフロール(左)と予選会(右)の映像が流れた

 スタッフロールをバックに、先ほどまで死闘を演じていた西と東の選手がお互いの健闘を称え合っていた。解説者や機材セッティングのスタッフたちも舞台に集まって、「今日のこの試合はよかったね」といった話をしている。

 「さあ、これから撤収だ」「速報をサイトにアップしないと」 関係者たちからはそんな声も聞こえてきた。「無事に大会を終えた」という安堵感と、「後もうひとがんばりしなくては」という使命感から語られた言葉だった。

純粋に楽しめるゲームイベント

 観戦を終えて、「こういうのいいな」と私は思った。関係者が皆「ゲームが好きで大会に携わっている」ことがひしひしと伝わってきたからだ。

 もちろんほかのイベントでも関係者の根元には「ゲームが好き」という気持ちがある。だから連絡作業や設営、撤収といった苦労にも耐えられるのだ。

 しかし、私が数年前にWarCraft IIIやStarCraft IIの選手として参加していた頃の国内大会は、どちらかというと「海外ではe-sportsという文化が広まっている。日本もそれに追いつかなければならない」というメッセージ性が強かった気がする。

 メッセージを打ち出すのも1つの形ではあるが、何か「押し付けられている」ようなプレッシャーを感じたものだった。「賞金が大きいから」。「試合に勝って強くなれば海外でプロになれるから」。そんな言葉を聞くたびに、「理由がなければゲームをやってはいけない」と言われているような気がした。


▲会場の試遊台でプレイする人たちも、試合に臨む選手たちも、本質的には「ゲームが好きでプレイしている」ことに変わりはない

 別に理由なんかなくたって、単に「好きだからゲームをプレイする」でいいのではないだろうか。Red Bull 5G 2014を観戦していると、そんな「ゲームと接する原点」を思い出せたような気がする。

 7色のライトに照らされた空間や「LOSERS GO HOME」のTシャツはとてもクールだったし、ドキュメントムービーは人間としての選手を紹介しているだけだった。DJが音楽をかけたり、「敗者が次の種目を選択する」という新ルールといった演出も大会を盛り上げるためのものであって、「こうでなければならない」という主張をするものではない。大会に賞金がないのも、「純粋に楽しめるゲームイベント」という理念を重視した決断だったのだろう。

 「ゲームで人と対戦できるっていいな」。そう心から思わせてくれる大会だった。

▲優勝は、西チーム!

e-sportsの原点

 「さあ、これから撤収だ」。関係者のこんな言葉を聞いて思い出した大会があった。

 2014年8月9-11日に台湾で開かれたTaiwan Open 2014(Day2のレポート)である。

 StarCraft IIの世界最強(韓国)のプロゲーマー8人と台湾の地元選手8人を呼んで開かれたTaiwan Open 2014もまた、「選手と試合」にフォーカスが当てられていて、Red Bull 5Gと同じように会場のライティングや音楽、選手の映し方にとことんこだわっていた。

 そして、大会を終えて関係者たちが一同につぶやく「さあ、これから撤収だ」という言葉が、Red Bull 5G 2014で聞いたときの感触と恐ろしいまでに似ていたのである。



▲ライティングが美しかったTaiwan Open 2014の会場と、撤収を行う関係者の皆さん

 Red Bull 5G 2014は大会中e-sportsというまったく言葉を使っていなかったと思うが、そんなRed Bull 5G 2014が図らずも「海外のe-sportsの大会とひじょうに近いものになっている」のは興味深かった。

 台湾のe-sports業界はまだまだ発展中の業界だから、Taiwan Open 2014も海外の成功例を模倣している部分はある。しかし、そういった海外のe-sports大会にはやはり、「ゲームで対戦するのって楽しいよね」という気持ちが原点にあるのではないだろうか。

Red Bull 5Gの更なる発展に期待

 最後にRed Bull 5G 2014について、観戦者の視点から2点、気になった部分を述べておきたい。

休憩所の無い、立ち見の映画館

 「席のない、クラブのような空間」というのは雰囲気があって良いと思うのだが、クラブと違い、参加者は会場で踊ったり好きに話したりするわけではない。ずっと大スクリーンで試合を観戦するわけだから、どちらかというと「映画の観客」に近いと言えるだろう。

 15時に試合が始まったRed Bull 5Gは19時過ぎに終了した。極端に言えば、観客は4時間以上立ちっぱなしで「映画」を見ていたというわけだ。

 試合以外に機材セッティングなど空き時間もあったとはいえ、腰掛けてくつろげる場所やフードの売店は会場になかった。「約4時間の間、何も食べずに映画館で立ちっぱなし」だとしたら、皆さんもさすがに疲れるのではないだろうか。

▲会場の観客は基本的に立ち見

 休憩時間中に外で軽く食事したいと思ったが、試合開始時間も表示されていなかったため、「会場に戻るべき時間」がわからないのも厄介だった。

 また、会場には前述の写真のように、座り込んで観戦している親子連れもいたが、中には座り込むことに抵抗のある人もいると思う。

 そんな観客の負担を和らげるために、会場の端にカフェやソファを置いて、試合が始まるまで自由に過ごせるようにしてみてはどうだろう。立ち見がメインであれば休憩所からスクリーンが見られる配置にしなくてもいいと思うが、少なくとも会場内にくつろげる場所があれば、観客の疲労感は大いに軽減するはずである。


▲方針の違いだが、Taiwan Open 2014をはじめ多くの海外大会では、やはり「座って観戦する」形式が多い

消化試合に見えてしまったウルトラストリートファイターIV

 もう1つは、大会のフォーマットについてだ。

 ぷよぷよテトリスの勝利で西側のチーム優勝が決まった後の最終種目、ウルトラストリートファイターIVは、ほかの種目に比べて観客を引き付ける魅力が薄くなっていたと思う。Red Bull 5Gは「チームの勝敗にフォーカスした大会」だからだ。

 今大会で優勝チームには賞品として主催のレッドブルからエナジードリンク「レッドブル1年分」のほか「F1 鈴鹿GP」の招待券が、協賛のアディダスからは「マイアディダス」という、「カラーリングや形状自分で決めて、オリジナルのスニーカーを作れる権利」が贈られた。

 しかし、選手個人に贈られる賞品はない。チームに対する賞品を抜きにすれば、「大舞台で勝った」という個人の名誉だけである。選手にとっては個人でもチームでも大舞台で試合に勝つことは特別なことなのだが、選手ほど試合に入れ込んでいない観客には、「名誉のために戦う」というのは、やや空虚に響いてしまう。

 実際、私には今回のウルトラストリートファイターIVが「消化試合」のように見えた面もあった。5対5のフォーマットである以上、これはある程度は避けられない問題かもしれない。今回は最初に東チームが1本取ったからまだよかったものの、最悪の場合は3-0であっという間にチーム勝敗が決してしまう可能性もある。

 だが、この点は個人にも何か賞品を贈呈することで緩和できる部分もあると思う。

 賞品といっても別に豪華である必要はない。たとえば今回、みんなのゴルフ6で優勝した斬鉄剣選手だけは例外で、みんなのゴルフ6のキャラクターデザイナーから「斬鉄剣選手をモチーフにしたキャラクターのイラスト色紙」が贈られていた。「これはすごいな」と私は思った。プレイヤーにとって「ゲーム製作関係者からの贈り物」はこの上ない名誉だからだ。


▲斬鉄剣選手に贈られたイラスト色紙

 ファンにとって製作者というのは神に近い存在だ。たとえば鳥山明氏がドラゴンボールの関連ゲームの大会で、優勝賞品に「その選手をデフォルメしたイラスト色紙をプレゼント」するとしたらどうだろう。巨匠が特別に描いてくれた自分のイラスト。ファンの誰もが羨み、「勝ちたい!」と思うのではないだろうか。そして観客の誰もが「鳥山明氏はいったいどの選手のイラストを描くことになるのか」と気になるに違いない。

 このように、「目に見える形での名誉」を賞品として用意すれば、チームだけでなく個人の側面からも大会の魅力がぐっと増すはずである。

これからも「ゲームで人と対戦できるっていいな」と思わせてくれる大会であってほしい

 以上、今大会を通して感じたことを色々と述べてみたが、「Red Bull 5Gのようなゲームイベントが国内に存在する」こと自体が奇跡的なことではないだろうか。

 Red Bull 5Gは毎年1回開催される予定だが、これからもその理念を曲げることなく、「ゲームで人と対戦できるっていいな」と思わせてくれる大会であってほしいと強く願う。

 なお、選手16人の大会中の「声」にフォーカスを当てた映像がRed Bull公式サイトのレポートで公開されているので、大会風景に興味のある人はぜひチェックしてほしい。

Red Bull 5G 2014 FINALS ダイジェスト映像

Red Bull 5G 2014関連リンク

Nemukejp「Red Bull 5G 2014」観戦レポート記事リンク

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